深刻化する環境問題に対して、世界中でカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現を目指す動きが加速しています。EUでは、2023年7月に自動車設計・廃車管理に関する規制案が発表され、新車製造に使用されるプラスチックの20~25%にリサイクル材を使用することが義務付けられる方向です。

さらに、このリサイクル材の20~25%(全体の約3~6%)は使用済自動車由来のリサイクル材でなければならないとされ、世界の自動車産業は「サーキュラーエコノミー」の実現に向けた転換期を迎えています。

こうした状況のなか、近年注目を集めているのが「Car to Car」の取り組みです。これは、使用済自動車から利用価値のある金属やプラスチックを回収・再加工して、再び車づくりに活かそうという壮大な試みです。しかし、理想とは裏腹に、その実現は技術的にも事業的にもたいへん困難と言われています。

この難易度の高い取り組みにおいて、当社はこれまで培った廃棄物処理・リサイクルに関する知見を生かし、自動車部品メーカーや化学メーカーといった動脈企業との“共創”により、新たな資源循環システムの構築に挑戦しています。従来のリサイクル事業を超え、社会全体の資源の流れを最適化する当社の取り組みをご紹介します。

 

 

なぜ「Car to Car」は困難なのか?

自動車は、エンジンやボディを支える鉄・アルミなどの金属部品、軽量化やデザイン性を担うプラスチック部品、さらにゴムやガラスなど、さまざまな素材が組み合わさってできています。これを「再利用できる素材だけを選り分けてリサイクルし、新車に再度使おう」という発想はシンプルに見えますが、実際には多くのハードルがあります。

例えば、プラスチックは内装やバンパーなど車体のあちこちに使われており、素材の種類もポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)など非常に多様。加えて、異物混入や経年劣化によって品質や性質が大きく変わり、単純な破砕・選別では高品質な再生プラスチックの安定供給は困難です。

使用済自動車のバンパーなどを破砕したもの

また、使用済自動車の解体には人手作業依存が高く、安全・安心で快適な労働環境の整備はもとより、人口減少を見据えた労働集約型事業の転換も大きな課題となっています。収益性を確保しつつ、より精度の高い、複雑なリサイクル工程を可能するには、コスト面や法的規制をクリアする仕組みづくりが不可欠な状況です。

手解体による資源循環の限界に着目した 自動車精緻解体の技術実証

人材不足・人件費高騰の中、手解体での異物除去では品質・コスト・量の創出ができない状況であり、これらを解決するためには、全体最適を意識したプロセス(機械化、ロボット化)及び技術開発が必要です。

その一環として、(株)デンソーとTREグループのリバー(株)を共同代表に、複数の法人が共同で行う「ELV自動精緻解体を起点とした水平サイクル(※1)を実現する動静脈一体プロセスの技術実証」が、環境省の令和5年度自動車リサイクルにおける再生材利用拡大に向けた産官学連携推進事業の一つに採択され、リバーELV川島事業所で実証を行いました。

本実証では、新たな ELV の処理手法である「自動精緻解体プロセス」の技術実証や、精緻解体で抽出した各種素材の高純度化・再資源化プロセスの技術実証などを展開。また、CO2 排出量削減の観点から環境への負荷低減効果を測定し、この処理方法の持続可能性についても検証を行いました。この実証を通じて自動車部品の再生材利用拡大を目指すとともに、動静脈一体となった自動車産業のサーキュラーエコノミー実現に貢献していきます。

水平サイクル:使用済製品を資源にして、同じ製品に利用するリサイクルシステムのこと

ELV由来プラスチックのリサイクルによる 「Car to Car」の実現に向けて

EUでの取り組みを受け、日本でも使用済自動車のプラスチックとガラスのリサイクル推進を目指す「資源回収インセンティブ制度」が2026年より開始予定とされています。また、環境省では、2031年に自動車部品のプラスチックの15%以上をリサイクル材とすべく、素材を確保するとの目標を掲げるなど、プラスチックリサイクルのニーズは一層高まっていくことが想定されます。

こうした動きを踏まえ、当社では自動車のプラスチックリサイクルにおいて、様々な取り組みを行っています。そのひとつとして、TREグループのリバー(株)は住友化学(株)と2023年4月に業務提携し、ELVから得られる廃プラスチックのマテリアルリサイクルの早期事業化を目指しています。

リバーは、これまでに培った使用済自動車の回収や解体、選別などの工程を通じて、プラスチック原料となる良質な素材を安定的に住友化学に提供します。住友化学は、提供を受けた素材を活用し、自動車メーカーが求める高品質な再生プラスチックを効率的に商業生産するプロセスを確立していきます。

また、関連した取り組みとして、より効率的な資源回収を目的に、ELV解体時に発生するバンパーや内装材などのプラスチックを破砕・選別を行う「プラスチック専用破砕機」を導入。樹脂選別ラインを有するリバー那須事業所との連携により、プラスチックの高度なリサイクルを目指しています。

リバーELV川島事業所で稼働中の「プラスチック専用破砕機」

「Car to Car」のその先へ “共創”で資源を余すことなく循環させる。

「Car to Car」の道のりは、まだまだ始まったばかりです。技術開発、法規制やコスト、社会認知など課題はたくさんあります。しかし、それを乗り越えるために産官学が連携し、実証を重ね、ノウハウを業界全体に広げていく――その流れが今、確実に広がりつつあります。

TREグループは使い終わったもの(廃棄物)の資源循環を前提とし、今ある資源を余すことなく活用し続ける社会への変革に向けて「WX(Waste Transformation)」の推進を掲げています。私たちは、廃棄物処理の技術的・採算的課題の克服への挑戦を通じ、動脈産業と静脈産業、さらには産官学の垣根を超えた“共創”を加速し、再資源化のみならず、製品設計の段階からリサイクルを考慮する循環型社会の構築に貢献し続けていきます。

この挑戦は、自動車業界の未来だけでなく、廃棄物処理やエネルギー問題といった私たちの暮らし全般に影響を与えるものです。廃棄物を資源へ、そして新たなエネルギーへ。そんな資源循環を通じて、企業と社会がより持続可能な形へと進化していく姿が、「Car to Car」の先に広がっています。

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